「ダイバーシティ認知と理解に関する調査」概要報告

NPO法人GEWEL(ジュエル)では、2019年夏、日本全国にお住いの方々を対象に「多様性のある社会づくりのための基礎調査」(港区男女平等参画センター:リーブラ助成事業)を実施し、その結果を「ダイバーシティ認知と理解に関する調査」報告書としてまとめました。

〔調査概要〕

本調査は、以下の2種類の母集団形成により実施した。

●調査A:全国規模の無作為抽出法によるオンライン調査

調査Aでは、全国の一般市民の用語認知・理解の実態について明らかにすることを目的とした。

 

●調査B:協力機関の呼びかけによるオンライン調査・質問紙調査

調査Bは、ダイバーシティ推進活動に関心が高い協力者からの回答に偏ることが想定されたが、調査A(一般市民の回答傾向)と認知・理解の程度を比較するための参考データにすることを目的とした。

 

〔調査結果のまとめ〕

オンラインで実施した「社会づくりのための基礎調査」に、【全国】9,663名のインターネットモニターから有効回答を得た。回答者のプロフィールは、性別、年代構成、および居住地分布が日本の人口動態とほぼ同率である。

1) ダイバーシティ関連用語の認知

【全国】90%以上 「まったく知らない」:「D&I」、「SOGI」
【全国】80%以上      〃    :「SDGs」、「インクルーシブ教育」
【全国】70%以上      〃    :「インクルージョン」
【全国】60%以上      〃    :「ポジティブ・アクション」
【全国】30%以上 「何となく理解している(説明できる人もいる)」:「ダイバーシティ」
【全国】50%以上            〃            :「LGBT」、「ユニバーサルデザイン」

・「ダイバーシティ」という用語の認知は進みつつあると推測されるが、2019年夏の調査時点において、【全国】一般市民の6割が「まったく知らない」と「見聞きしたことはあるが意味はわからない」と回答。
・【港区】在住者の用語認知率は、【全国】一般市民の平均と比較してやや高めの傾向。
・【全国】一般市民や【港区】一般在住者と比べ、【参考】としたダイバーシティ推進活動の関係者が多数回答した調査Bでは、用語の認知率が圧倒的に高値を示した。
・用語の認知率は【全国】一般市民の性年代においても差異がみられ、女性よりは男性、年代は若い層のほうが有意に高い認知率であった。

2) あなた自身の考えや経験に当てはまる程度

・外国人の親しい友人、ダイバーシティ研修経験は、【全国】約5割が「まったくない」と回答。
・性別役割分業意識や多様性教育についての考えは、【全国】一般市民と【参考】としたダイバーシティ推進活動の関係者の意識差が特に大きい。前者は「どちらともいえない」の割合が高率。
・20代男女の回答が、30代より上の年代層の回答傾向と特に違いが大きい。教育の変化による影響の可能性も示唆される。

3) お互いの違いや個性を活かしあう社会づくりの推進活動についての意見

・推進活動を積極的に行うべきという賛成意見が総論として多数であった。
・子どもの教育、日本の学校教育の中で多様性の尊重を扱うべきとの意見が多く挙げられた。
・時代の流れとして自然なこと、との指摘が多数あり、その一方で推進活動のあり方や変化に対する不安や難しさの声も寄せられた。

調査報告書(PDF版)のダウンロードはこちら

※調査報告書のデータ使用の際は、office@gewel.orgまでご連絡ください。
お問合せ先:GEWEL事務局  office@gewel.org

 

〔GEWELからの提言〕

企業組織および企業人を対象としたダイバーシティ認知度調査は過去にも存在していましたが、広く一般に調査したものは見当たりませんでした(GEWEL調べ)。本調査は、日本で最初の本格的な「ダイバーシティ関連語句の認知と理解」に関する調査として実施されました。

企業の競争戦略に限定せず、多様性を包摂する風土が、港区および日本国内にどれほど浸透しているのかを客観的に示すことで、男女平等参画、多様な働き方および生き方、外国人や障害者など、多岐にわたる接点から多様性の意識啓発につながることが期待されます。

本調査の結果、「ダイバーシティ」という言葉の認知は、歴史のある「ユニバーサルデザイン」や昨今ブームとなっている「LGBT」ほどの浸透には至っていませんでしたが、その他の関連用語より、用語の説明ができる・用語の意味を何となく理解している人の割合が多い傾向にありました。また自由記述では、時代の流れの中で多様性の尊重、理解、受容が求められていることを指摘する意見が多く挙がりました。

これらのことから、今後、「ダイバーシティ&インクルージョン」の認知は拡大に向かうことが必然のように思います。しかし、私たちダイバーシティ&インクルージョンの推進に関わっている人とそうではない人の認知や理解の差異、また推進活動への温度差はかなりの開きがあることが明確になりました。関係者の間では、D&Iが社会に徐々に浸透しているように認識していても、実際に「D&I」は9割が、そして関係者であっても5割の方が「まったく知らない」という状況もみえました。

自由記述では、総論として多様性を活かしあう活動推進に賛成多数という結果でしたが、今回の調査では「どちらともいえない」層の割合もかなりの数にのぼりました。この「どちらともいえない」層や「無関心」層の実態まで、今回の調査では把握することができませんでした。

用語の認知度についても、さらに思考や行動についても、一度の調査で終わってはその変化を確認することができません。したがって、今後、全国規模で行政や学校、企業と連携して、定点観測できる調査を継続実施することで、ダイバーシティ推進活動による変化を捉えることをGEWELから提案します。

GEWELでは2004年から2017年まで「働く女性の意識調査」として、働く女性を対象に女性活躍とダイバーシティについての調査を行ってきました。それらと共通の調査項目を設定することで、10年前、15年前の傾向との比較も可能になります。

GEWELがこれまで中心にしてきた企業との取り組みだけでなく、調査結果からも要請のあった教育や地域におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進活動にも範囲を広げ、これからも持続性のある豊かな社会づくりに貢献できればと思います。

以上

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