小1の壁 多様性に満ちた公立小学校と発達障害のリアル(2)

小1ママのお勉強会(2)

前回は、小学校が多様性に満ちた場所になっていること、また発達障害が小1の壁の一つになっている一方、多様性のある生徒のインクルージョンを考えるきっかけになりうること、そして、発達障害とは何か、知っておきたいことについてご説明しました。

今回は前回からの続きで、発達障害への支援策からご説明したいと思います。

発達障害に対する支援とは?

発達障害に対しては、「治療」のほかにも支援策が国・地方自治体等により様々なものが準備されています。大きく分類すると、文部科学省管轄の支援策と、厚生労働省管轄の支援策とに分けられ、次のような支援策があります。

<文部科学省管轄>
教育支援(特別支援教育) 通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校での支援
普通級におけるインクルーシブ教育(個別指導計画の策定・学習支援員配置)

<厚生労働省管轄>
生活・就労支援 発達支援センターの自治体への設置と次の各業務の同センターからの提供
・相談支援
・発達支援
・就労支援
・普及・啓発活動

双方の支援策とも、平成17年発達障害者支援法に基づくもので、文部科学省・厚生労働省ともガイドラインなどの文書通達により、支援策の拡充を図っています。しかし、認知数が急増した発達障害児童・生徒数に比べて、支援の手が行き届いているとまでは言えない状況にあるといえます。また、自治体により、これらの支援策の具体的な姿もかなり違っているようです。

 

発達障害のママのお悩み こんなことがある

【どの学校・どのクラスに我が子を行かせるか?】
小1のママでしたら、就学相談、という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。発達障害に関して、主に特別支援教育を提供しているのは若干の地域差はありますが、標準的には次の3施設です。
―特別支援学校
―特別支援学級(小中学校に開設)
―通級指導教室(小中学校に開設)
就学相談は、小学校進学の際に、どこの学校に籍を置くか決める機会ですが、これらの学校のどこに籍を置くか、悩みが出ます。なお、支援籍・副籍などのオプションがある自治体があり、学籍が一つではなくなっているところもあります。しかし、その場合でも主たる学籍をどちらにするか、これも就学相談で決めることとなります。

特別支援学校・特別支援学級に学籍をおくか否かは障害の程度に応じますが、ここは悩むところです。特別支援学校・特別支援学級に在籍すると、基本的に普通級の文部省学習指導要綱には沿っていない教育を行うことになります。

そこで、特別支援学校になると、上の学校の選択肢が狭まり、将来が心配、あるいは、自分の子供が自立するために本当に必要な教育を提供してくれるのはどこか、考えると学籍に関する迷いが生じます。手厚さはあるが、勉強はどうなるのか?これが典型的な悩みの一つです。

普通学級に在籍させてみて、後から変える、というケースも多いようです。また、読み書き障害が顕著になるのは、小学校5年生くらいから、と言われています。そのため、高学年になるまで、特別支援教育なしで何とかやってきたが、それ以降支援を必要とし、学籍も変わる必要が出てきた、というケースも見られます。

普通学級も、現在はインクルーシブ教育が進み、環境を発達障害の児童に合わせて「環境調整」をしてくれる場合があります。たとえば、集中の妨げになるようなものは教室の掲示物もなるべく後ろの壁に貼って、授業中は見えないようにする、視覚過敏のある児童のために
カラープリントを白黒にする、聴く機能に問題がある場合は、合図で教えるなど、工夫の例があります。

発達障害の子どもだけでなく、教室を全員が「わかる」教室にすることがインクルーシブ教育の目的とされています。教室のユニバーサルデザインという言葉がありますが、発達障害の子どもにわかりやすい教室は、どのお子さんにもわかりやすい教室である、とのコンセプトが背景にある言葉です。

環境調整+通級または環境調整のみでだいぶ負担が軽減される発達障害のお子さんもいます。しかし、困りごとの程度によるところがあるのは否めません。我が子の場合はどうだろう?みんなと一緒がいいかもしれないけど、負担は大きいかな?と考えると、悩むケースも多いようです。これも典型的な悩みの一つです。

【手帳は取るべきか?】
また、先ほど、発達障害は、必ずしも当事者が障害者であることを意味しない、と言いましたが、手帳をとるべきかどうか、も問題になります。発達障害も程度が中程度から重くなると、知的障害との重なり合いが見られます。また、知的障害がなくても、学習障害の程度が重い場合、IQテストなどで読み書きや計算ができなかったことから、障害の範疇に分類されるお子さんもいるようです。

手帳はレッテル張りにもつながり、結果社会的に不利に取り扱われることがないか、ママはここでも心配になります。

【支援の手厚さはママの味方】
ここで、当事者ママのご意見を一つお伝えします。
「学校がどことか、手帳がどうとか、それはどうでもいいです。問題はどれだけ自立のために必要な支援が受けられて、子供が自立するのを助けてくれるか、じゃありませんか。」

なるほど、そうですね。発達障害の当事者の最大の課題は、自立です。これは知っている限り、どの医師も発達障害のお子さんを持つご両親に最初に話すことです。発達障害が軽度であっても、自立は課題です。

そして普通のお子さんよりも自立のためにすることが多くなります。定期受診をしながら発達障害のお子さんを育てる親御さんは、自立、二次障害の予防、これらの二つを目標に、お子さんの子育てを頑張っています。

自立について、教育機関も年を追うごとに重要な問題ととらえています。特別支援学校も、一部だけでも勉強が得意な点があるお子さんには、個別の指導を付け関連する分野での就労につなげる進路指導をするなど、以前よりも、「食べていける」ことに重きを置いた考え方をしています。

さらに、手帳については、正しい理解をする必要があります。手帳をとることが、イコール障がい者として生きていく ではないということです。手帳は必要なくなればやめる(更新しない)ことができるし、いずれ就職を考えるときも、手帳を使って就職するのかしないのかを自分達で決めることが可能です。

「極端なはなし、手帳を持っているかどうかは、自分たちが言わなければ周りはわからない。だからこそ、手帳をもつとレッテル張られた気がする・・・」というよりも、手帳を取得することで、目の前の子どもに何かできるサービスや手立てがあるなら、選択肢の一つとして考えてみる、というのも取りうる考え方です。

小1の壁シリーズの記事は、ワーキングマザー一人だけで対処することはやめて、頼れるときには人に頼ることをおすすめしているのですが、この当事者ママのご意見は目線が一緒だな、と思います。

 

発達障害の子供の居場所・相談できる場所はこんなところ

【放デイはこんなところ】
学校で、お友達と仲良くやっていける発達障害のお子さんも実は多くいますから、すべての子どもさんに学校や学童保育以外の居場所が必要とは思いません。しかし、お友達とのトラブルが多い・いじめを受けてしまった、という場合は、学校でも学童保育でも居場所がない、と悩むことがあります。そういう場合は、放課後等デイサービスの利用を検討してみましょう。

放課後デイサービスは、行政の指定を受けた事業者が、児童福祉法に基づき、療育の必要な学童を、放課後や長期休暇に預かってくれる施設です。学習の支援や、療育など、発達障害のお子さんに必要な居場所と、発達の支援を提供してくれます。所得によって、サービス料が違いますが、受給者資格証という市区町村が発行する証明書の提示で、最大でも37,200円の利用料金で利用することが可能です。受給者資格証の発行の仕方など、詳しくはお住いの福祉課でお尋ねください。

放デイの活動ですが、事業所によって特色は様々です。療育に特化したデイもあれば、サッカーやテニスなどを通して体を動かすものもあります。

中には、絵画やさおり織りなどを学ぶことを取り入れているデイもあれば、集団で行動することを学ぶために、さまざまな場所に遊びに行ったり畑作業をしたり、買い物をしたりと、選択肢は多様です。

自分の子供に何を身につけさせたいのか、どんな環境におきたいのかを考えて選択し、子ども自身が楽しい場所だと思うことができれば、学校以外の居場所になり得ます。

【習い事にはまってみよう】
習い事・民間学童でも、軽度の発達障害のお子さんを見てくれるところは意外と多くあります。診断されて、周囲の対応が難しいな、と思う場合でも、習い事に居場所があれば、お子さんも楽しいでしょうし、周囲も少し対応方法を考える余裕ができます。
英語学童、美術教室、プログラミング教室などなど、特性にあった習い事の傾向があるようです。ワーキングマザーの皆さん一般にそうだと思うのですが、子供が何かに夢中だと親も安心ですね。

【スクールカウンセラー・養護の先生に相談】
スクールカウンセラーの配置も今は増えてきていますね。スクールカウンセラーの先生は、特にお子さんの学校での居場所の確保・トラブルの解決のヒント・親御さんの愚痴聴き・トラブル情報の管理職への情報共有など、担任の先生とは独立して活動してくれています。

何か要望があるとして、直接学校側に伝える前に、スクールカウンセラーの助言を受けて伝えることもおすすめです。養護の先生に理解がある場合、相談を受け付けてくれることもあります。スクールカウンセラーとは違う役回り、でもお子さんの相談をすると、とても助かるヒントをくれる重要な存在です。

その他、教育支援センター・教育相談室などの名称で自治体が発達障害の相談を受け付けています。児童相談所の機能のうち、発達障害に関する相談機能は一つの大きな柱のはずです。
しかし、昨今の虐待発生件数の増加で、なかなか児童相談所は発達障害にまで手が回らないという残念な実情があります。

 

最後に

こうして発達障害のことを一通り理解すると、学校で起こっていることの一部はよりわかりやすくなるのではないかと思います。わからないために、誤解し、子供に関係する大人たちが非難しあうような社会は誰にとっても住みやすくありませんし、ワーキングマザーの皆さんも仕事がしにくくなってしまうことでしょう。

むしろ、発達障害の子どもたちが少しずつもたらす学校や教育環境の変化は、大きな目で見ればすべての子供たちに選択肢の幅を広げてくれる可能性を持っています。また、発達障害に関する困りごとの解消の手法自体、つまり、支援と環境調整ですが、これらは発達障害のない子どもの抱える問題にも共通して使える手法であると考えられます。

ところで、例えば「吹きこぼれ」といわれる、突出した学力を持った子供や、特殊な感覚を持って生きづらさを抱える子供も諸外国では「特別支援教育の対象」というと、どのように受け止められるでしょうか。特別支援教育の対象生徒数が先進諸外国では、もう少し多い傾向にあります。

子供たちのよりよい教育環境整備を、ワーキングマザーの柔軟な思考とマインドによりそれぞれの「持ち場」で後押しできると大変すばらしいことと思います。

 

*発達障害のことをもう少し深く理解するためにおすすめのサイトなどを下記にリンクとして掲載しておきます。

リタリコ発達ナビ 各地で放課後デイサービスを提供する事業者さんでもあります。漫画家のお母さんや働くお母さんのコラムは必読です。
https://h-navi.jp/

公益社団法人 発達協会 30年の長い間、発達障害の子どもと家族の支援をしている団体。クリニックを母体とし、医療情報・心理情報は信頼できる内容です。家族の問題や就労まで総合的な支援を行っています。
http://hattatsu.or.jp/

みんなの学校 公式サイト 発達に困りごとを抱えた子供が多く登場します。支援級がない学校のインクルーシブ教育の例です。
http://minna-movie.jp/

 

ママのお勉強会へのご参加、誠にありがとうございました!

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