プールの壁。
この現実に心が折れないようにするために!
はじめに
ワーキングマザーに立ちはだかる小1の壁。もともとは保育園で丸抱えにしてもらっていた子供の世話を学童保育でしてもらおうにも、学童に空きがない、学童に入れたとしても保育園よりお迎え時間が早くて仕事に影響することなどから「小1の壁」と言われたものです。が、実のところ、小1生活は「壁の連続」。イベントごとに壁がある、といってもいいかもしれません。
そこで、みんなで一緒にドミノ倒しみたいに壁を取り払ってしまおう、ちょっとしたお役立ちマニュアルをたくさん共有して、「小1の壁なんかこわくない」と思うワーキングマザーを一人でも増やそう、という企画です。
暑くなってきましたね、さあ、プールの用意です
暑くなってくる時期に「スクール水着のご案内」などと学校からお手紙が来ます。ランドセルの中にプリントをためておくお子さんがいても、「時期にはこういうのが来るのだ」と思っておくと安心ですね。たいていは一斉の購入で、学校によって水泳の級を示すワッペンの張り方や、水泳用の帽子の色なども一緒に案内されます。
今年の目標は~メートルだ!プールだ!と喜ぶお子さんがいる一方で、「まだ泳げない」と、お風呂であわてて顔に水をつける練習をするお子さんもいます。この点でもまだまだ一年生は個性的でばらばらなものです。だから、お子さん同士を泳ぎで比べるのはあまり意味がありませんよね。洗面器に水をつけたら「ママ、目が痛い」「ママできた!」「僕はゴーグルなしではもうしないからね!」いろんな反応があります。一年生のプール授業を機に、子供を泳がせることができるようになった、となればとてもいい思い出にもなるでしょう。
そんな中、着替えをどうしたらいいのか、自分で身の回りのことができるか、といった観点から、課題があることがわかるお子さんがいます。体操着の着脱がもともと遅いところにもってきて、プールはどうすればいいのか、頭が痛い、とおっしゃるワーキングマザーがいます。さらに、「自分のしつけが悪かったの?うちの子は発達が遅いの?」と頭のなかがいっぱいになってしまった、そんな経験をされているワーキングマザーもいます。
「不器用」からあらためて考える、親子の心身の健康
プール開きをきっかけに、学校生活を振り返ると、「お道具箱のクレヨンが揃えられず、『ご家庭でもご指導ください』と連絡帳に書かれた」「動作が遅い様子が見られます。」などとあれ?と思うことが指摘されていることがあります。果たしてこうした「のろさ」はしつけのせいなのでしょうか。
保育園では、保育士さんがうまく子供が動けるように誘導があり、手伝ってくれていたので目立たなかったけれども、支度、というと毎朝「早くしなさい!」になる、ほかのしつけもしにくい子供かもしれない、といった悩みがあります。普通、ワーキングマザーがいくら忙しくても、こうしたことを放っておくことはありません。「教えても、教えても」「手伝っても、手伝っても」という場合には、なにかほかに原因があるのではないかと考えてしまいます。
もしほかに原因があるのだとすると、考えられることの一つに、発達性協調運動障害があります。発達障害の一種である、この障害は、子供の6~10%にあるといわれ、運動能力や、手先での仕事に問題が出がちです。この障害単独で生じることもありますが、ADHDや自閉症スペクトラム障害と併発することも高い率で生じるとされます。これは専門家からの診断を受けてはじめて確定することです。
発達性協調運動障害を見つけたら、小児科医の先生や作業療法士さんが対応の仕方を知っています。こうした障害がなくても、専門家から見れば、子供の動作や親の教えかたなどに工夫のしどころがある、といった場合もあります。着替えが周りの子より遅いから、体育やプールが嫌だと言い出すお子さんも出てきます。その場合、体育やプールで着替えがある日は、いつもよりゆったりした着替えやすい服を着ていくことや、ほかのお子さんと違うやり方で、スムースに着替えを進めることも可能かもしれません。また、学校での先生とのやり取りも、問題を明確にして課題のレベルを落としてもらうなどして、もう少しスムースに進められるかもしれませんね。
このように、お子さんが着替えや動作に自信をなくして、プールはおろか、体を動かすこともすべて嫌になり、心身の健康を損なう前にできることがあります。お子さんをほかのお子さんと比べることも、ワーキングマザーのあなたのしつけが悪い、などと思う必要もありません。思い切ってこの際時間をとって相談してみるのはどうでしょうか。地域によっては受診・相談に時間がかかることもありますから、「すぐに対応」とまでは思わず、「ゆっくり観察をしながら順番をまとう」くらいに思っておいたほうが、子育て時間の確保と仕事とのバランスがとれやすいかもしれません。
プール授業でよくあるワーキングマザーの「受難」
泳げない、着替えがうまくいかない、とプールをきっかけに頭を痛めるWM、そのほかにも頭が痛い、あるいはモヤモヤする問題があります。とりわけ、
・プールの時期は、持ち物が多い
・プールの時期は連絡帳でのご注意をいただくことが多い。
頭が痛いですね。水泳帽・水着、着替えに使うタオル。今ではゴーグルはOKな学校も多く、ゴーグルではしゃぐ子供をしり目に「なくすとかトラブルになったらヤダなあ。。。」と不安が頭をよぎることもよくあります。プールの日の後の連絡帳を見ると、「少し長かったので、爪を切ってきてください」「髪の毛をよくまとめておいてください」「プールカードを忘れたので、今日はプールに入れませんでした」。
開き直りのススメ
「保育園の時からプールにもっと親しむように、スイミングに行かせたかったけど、働くことで精いっぱいだった」あるいは「泳げるレベルなんか期待しないでほしいな、だってもともと水に近づかないことで危険は予防できるのだから。なんで学校ではプールなんかあるの」WMの不満は続きます。そう、期待するところと、実際に提供される学校での機会の内容にはギャップがあり、一人一人違います。自分の母親像への期待と現実もギャップがあります。
「おともだちの水着を持ってきてしまうなんて、うちの子おかしい!」いえいえ、注意力に問題があるお子さんも、普通のお子さんもこの取り違えは、本当によくあることです。考えてみれば、濡れた他人の紺色のスクール水着を自分のものと見分けられるお子さんのほうが少ないです。
新学期入ってから「どうか自分の子が普通(またはそれ以上)であるように」と皆さん願っている気持ちが程度の差こそあれあります。ところが、いつも期待は見事に裏切られ、プールもまたそういうものです。きっとプールのほうが授業よりも裏切られる度合いは高いでしょう。プールでお母さんが疲れ果てた、という話、よく聞きます。
こんな風に問題噴出のプールの時期は間違いなく時間の余裕がなくなりますが、プールの情けない現実を笑いとばす心の余裕をとりもどしてみませんか?プールカードに親のサインを偽造した、学校の行きかえりで息を止める練習してたら、頭が痛くなった。そんな話を聞きながら、「あははは、よくやるねー」と思えたらいいですよね。遅刻の理由も、子供の忘れ物の問題だったら、1度は恥ずかしくて言えない本当のことを職場で言ってみてもいいですね。たまには情けない子育ての実態を知ってもらって、また自分の弱みを認めてよいのだと思います。
保育園に子供を預けていた時には小さい成長がとてもうれしかったのに、なぜこんなに欲張りになったのか。。。そんなことを考えているうち、期待と不安のいっぱいだった一学期も終わりに近づいています。
プールの壁まとめ
子育てと仕事を貫く永遠のテーマに、「期待と現実のギャップ」があります。これがあるから子供にがみがみ怒ったり、部下にも上司にも不満を持ったりします。仕事と子育てはこの面で、どれだけ違うのでしょう。正解はありませんが、できるだけ朗らかに笑って過ごしたほうが得です。ぜひ、親子で洗面器への顔付けや、たとえ1メートルでも泳げるようになった時の達成感を楽しむ夏にしてください。