アジア女性社会起業家ネットワーク(AWSEN:Asian Women Social Entrepreneurs Network)が主催する「Global Women Impactors」は2017年3月に発足し、GEWELもその活動に協力してまいりました。日本の女性リーダーたちがアジアの女性社会起業家のメンターとなり、製品やサービスの日本展開実現に向けて伴走する約6か月のプログラムです。初年度にあたり、GEWELからメンバー3名が参加し、異文化ダイバーシティを体感し、女性・ビジネス・リーダーシップという共通項で繋がりました。参加したそれぞれの所感から、ダイバーシティ体験がもたらすものの一端を知っていただけるはずです。
1.参加者所感
①小崎なるみさん
②石田映子さん
③外崎真由美さん
2.企画者所感 副代表理事 小嶋美代子(http://gewel.org/2017/12/03/report/)
3.総括 代表理事 村松邦子
葛藤から見えてくる「ダイバーシティの可能性」
1.参加者所感
①小崎なるみさん
6ヶ月のメンタリングが終わって、何だか疲れた…と言うのが本音であると同時に皆との協業が終わってしまい淋しい気持ちもあります。スタート前には、色々な知識を持ち合わせたメンバーが集まると言う事で、ダイバーシティの醍醐味を感じられる良い機会だと思っていました。また、各自のスキルを上手く融合してメンティの望みを叶えるのがメンターの役割と疑いなく思っていたのですが、実際は大きく違っていました。ダイバシティに対して、こんなに自分で思い込みしていたのだと気づいたのが、今回の一番の学びです。ただ、同時にとても考え疲れてしまいました。
その思い込みというのは、全体で皆一緒になって、同じ型にはまってやる必要があるということでした。会社員の経験が長いことが影響しているのか、互いの違いを理解すると言うところが本当には分かっていなかったからなのか、バラバラとした状況で動き出した時はとても居心地が悪かったです。ダイバシティは、個々のスキルを活かしつつも融合(一本化)していくから有用なのだと考えていた私には、当初、今回のプロジェクト運用が失敗したという気持ちが強かったのです。また、気持ちの切り替えがそこからなかなか出来ませんでした。
正直なところ未だに「有用なダイバシティ」とは何かと言うのは、クリアに見えていませんが、今回私は、個々の違いとアプローチの違いまで互いに尊重する事で結果的に有用になるのだと学びました。
プロジェクト自体は、最終的にメンティが望んでいた顧客からの生の意見を届ける事が出来ましたので、チームと皆で一安心しています。
今後は、より広い視野で物事を見ることの大切さを心に留めておきたいと思いますし、この苦い経験は是非シェアするべきだと考えています。
②石田映子さん
6か月間のGWIのメンタープログラムへの参加を通して、私自身が得た気付きと、感じたことをまとめて報告いたします。
(1)メンティとの関わりに関して
共通言語は英語、コミュニケーションの手段はオンライン、ということは、当初から明確でした。
特に英語に関して、相手の言うことは理解できても、私自身がその会話のペースで英語を返せないため、会議での積極的な発言が後手に回りました。言いたいことがあるのにその場で日本語でしか表現できないことは、すごくもどかしく感じました。
悔しかったのは、タイ渡航がかなわなかったことと、オンラインでの会議で英語で発言がほとんどできなかったことから、メンティに、私個人をあまり認知してもらえなかったことです(当然ですが)。
日頃の業務で「会議に出席するなら発言して」と言っている立場であるのに、自分が全く逆の行動をしていることにものすごいジレンマでした。
また、IT業界のメンティであることに、少なからず私のIT企業での経験をフィードバックできると考えていましたが、メンティが求めることと、私の過去の経験や知識が合致していなかったため、貢献できることは何だろうとすごく考えました。自分の視野の狭さに気づかせてもらいました。
メンティとの会話は、英語が堪能なメンバーが主体的に進めてくれ、その内容を日本人メンターチームで会議終了直後に振り返り、次のアクションを決めることで、ついていくこともできたことは、メンバーに感謝です。
(2)メンターチームとして
メンターチームは、バックグラウンドも、コミュニケーションスタイルも本当に様々なメンバーでした。でも、メンティに対して貢献したいという思いが共通しており、共通のゴール「メンターチームは、メンティが望むことをきちんと把握し、メンティの自立を支援する関わりをする」を、開始当初に確認できたことが、今回取り組みがうまくいった理由だと思っています。
ゴールに対するアプローチ、支援方法は違っても、それを自然に尊重しあえるメンバーであったことも、幸運でした。考え方が違う時も「そういう考えもあるけれど、私はこう思う」という伝え方をし、「では、チームとしてどうする?」を話せるメンバーでした。
私自身はチームのメンバーの中で、貢献度が少なかったと反省する点もありますが、仕事でもプライベートでも、自分の周りにないタイプのメンバーと接することができたことは、視野を広げられ、自分を知るという意味でも収穫が多かったと感じています。
(3)まとめ
会社員として働いていると、目の前の業務のことだけを考えがちで、その先にどのような課題が解決されるのか、という視点を忘れてしまいます。けれど、どんな仕事にも、その先に必ず、社会貢献につながる課題解決があるということを、社会起業家の取り組みを知ることで認識できました。
自分の仕事の意義を見失いがちな会社員にこそ、このような取り組みに参加して、自分の仕事がどのような社会の実現につながっているかを考え、意識してもらう必要があるのではと感じました。また、部下や若手を育てる立場の人たちには、仕事に対する動機付けとして、会社の業績や、ステークホルダーへの貢献というだけでなく、もっと広い視野で仕事の意義を説き、モチベーションアップにつながる育成をしてもらいたいと思いました。
私自身の仕事においても、今回のプログラム参加は、目先の課題解決が、組織への、社会への、世界への課題解決の一歩になっていくということを、自分事として意識できるようになり、この機会を得ることができて本当に感謝しています。
③外崎真由美さん
アジアの女性起業家を日本のキャリア女性がメンターとして伴走し、どう日本市場で戦えるように導いていくか。
「国と商材は違えど、彼女の動きに共通点を多々感じる」というただ一点だけで参加してしまった、大丈夫なのだろうか、この不安は結局最後までなくなることはなかった気がします。
まずはメンティ自身がこのプログラムに何を期待しているのか、日本市場でどう戦っていきたいのか、それがとても重要でありそれがわからないと何も始まらないと思っていました。
6月にタイに行き、チームの皆さんとそれを探っていくうちに今度はチーム内の着地点は何処なのか、自分の立ち位置は何処なのかがとても気になりました。
私は、一応会社と言う組織に属してはいるものの小さな組織でかつほとんど一人で行動してきたのでチームで何かするということに慣れておらず、メンティのチームの方向性に合わせよう合わせようとして途中で苦しくなってしまいました。ポジティブなことはもちろんネガティブなことももっともっとチーム内で意見を戦い合わせたほうがいいのではないか、自分のこう思うにはいつも答えがもらえない気分になりました。それはメンティに対しても同じで、漠然としていてもいいから日本でこういう風にやってみたいというのは無いのかなと。そしたらゴールが決まって手伝いやすいのにとさえ思っていました。
スタートアップのときに奥田さんが言った「考えた結果伴走できないもありだと思います」が頭の中をぐるぐる周り途中ドロップアウト未遂もしました。
未遂したことにより、自分ひとりで考えるべきではないということに逆と囚われすぎていたのではないか。チームでメンタリングをしていても全員が同じ意見であるべきとは限らない。それぞれが自分の経験値や視点から各々メンタリングすることもありなのではないかと気づきました。
住んでいる場所が私だけ離れているということもあり気づいたあとは個人で色々と最終トライをさせていただきました。アジアの女性起業家と日本の地方女性起業家はどこか似ているとずっと思っていた私としてはこの試みはやれてよかったと思っていますが、それが最善の方法であったかは今も自信がないです。
理想があったわけではないのでギャップは生まれていません。
成功したという思いもなければ、あの時こうすればよかったという後悔もありません。ちょうど時を同じくして一匹狼からチームで働くということに変化していたこともあり、この体験は本当に勉強になりましたし、その分とっても苦しかったです。
けれども実業務と仮想業務で同じようなところでつまずき考えた時間は確実に私の中で何かを変えてくれたことは間違いありません。現在環境的に人種や性別、年齢、専門分野が違う人達と仕事をしているのですが、今回の経験が少なからず私のちからになっていることは確かです。
また本当のチームメンタリングの成果は終了したあと、つまりこれからどう考えどう行動するかで何か見えてくるのかもしれないとも思っています。
2.企画者所感 副代表理事 小嶋美代子(http://gewel.org/2017/12/03/report/)
3.総括 代表理事 村松邦子:葛藤から見えてくる「ダイバーシティの可能性」
「日本の女性リーダーが海外の女性社会起業家を支援?」「 国境を越えたメンタリング?」 主催者の渡邉さやかさんから、はじめてこのプログラムの企画趣旨を伺ったとき、たくさんの「?」が頭をよぎりました。メンタ―・メンティー双方にとっての貴重な成長機会、異文化ダイバーシティチームから生まれる成果への期待感と同時に、いろいろな意味で難易度の高そうなメンタリングプログラムに参加してくれるGEWELメンバーはいるのかと。。。
結果的に、勇気をもって一歩を踏み出してくれたメンタ―の小崎さん、石田さん、外崎さん、伴走者の小嶋さんの所感から、改めて「ダイバーシティの可能性」が見えてきました。「違いを理解し、活かしあうことの難しさ」を体験し、自分の深い部分と向き合うことにより、多様性のあるチームならではの成果と成長が生まれることです。
一人ひとりが葛藤し続けてきたからこそ気づいた「ダイバーシティに対しての思い込み」や「視野の狭さ」。「思っていたような貢献ができず」、「着地点がみえない」状況でも、メンバーの違いを尊重し、共通性を探り、信頼関係を築こうとする意思と行動力。アジア社会起業家の熱い想いに触れ、これまでの価値観が揺さぶられたことは、自分自身の視野と可能性を広げることができた貴重な体験であったと思います。
ここからが、ダイバーシティの実践に向けた新たなスタート。GEWELはこれからも、皆さんとともに「ダイバーシティの可能性」を探求していきます。
このプログラムに関わったすべての皆様に、心より感謝いたします。